親殺しのその先へ 映画『武曲 MUKOKU』感想/ネタバレ

『私の男』の熊切和嘉監督によるフランス留学後第1作となる本作。

映画としてそんなに好きな作品ではないですが確かな力量を感じさせてくれた『私の男』からどれほどのステップアップがあるのか、さらに個人的に好きな土地である鎌倉が舞台とあって期待値アゲアゲで観に行って参りました。

率直な感想を言えば盛り上がりに欠ける部分が多く、素晴らしい出来とはとても言えないまでも、後になって思い返してみると印象に残る良い画が多かったように感じる作品でありました。

撮影は『私の男』に引き続き近藤龍人氏でした。

それでは以下あらすじなどをどうぞ!

あらすじ

剣道の達人だった父に幼少時から鍛えられ、剣道5段の腕を持つ矢田部研吾。しかし父をめぐるある事件をきっかけに剣を捨て、自堕落な日々を送っていた。研吾のもう1人の師匠である僧侶・光邑は、研吾を立ち直らせるため、ラップのリリック作りに夢中な高校生・羽田融を送り込む。融は剣道初心者だったが、本人も気づかない恐るべき剣の才能を秘めていた。

スタッフ

監督
熊切和嘉
原作
藤沢周
脚本
高田亮
プロデューサー
星野秀樹
撮影
近藤龍人
照明
藤井勇
録音
小川武
音楽
池永正二
メインタイトル題字
武田双雲

キャスト

  • 綾野剛 矢田部研吾
  • 村上虹郎 羽田融
  • 前田敦子 カズノ
  • 片岡礼子 羽田希美
  • 神野三鈴 矢田部静子
  • 康すおん 田所
  • 風吹ジュン 大野三津子
  • 小林薫 矢田部将造
  • 柄本明 光邑雪峯

作品データ

製作年 2017年
製作国 日本
配給 キノフィルムズ
上映時間 125分

良くも悪くも綾野剛

本作を思い返したときに僕の中に強烈に印象付いているのは「綾野剛がいた」ということでした。

近年の若手俳優の中で最も頭角を現しているのが綾野剛だと思っているのですが、(若手というには少し歳をとりすぎているような気もするが…)

本作は綾野剛の印象によって良しにも悪しにも大きく転びえる作品になっているような気がします。

本作の綾野剛はどうしようもないクズの役で、まぁそうなってしまったのには大きな理由がありますよという話でもあるのですが、そのクズっぷりを受け入れられるかどうかが作品の受け止め方の別れどころなのかなという風に思います。

ちなみに僕は受け入れられなかった側の人間なのでした…。

綾野剛と言えばクローズ辺りから頭角を現し始め、いつのまにか引っ張りだこになっていく中で作品とともに確かな成長を重ねてきた俳優だと感じています。

『リップヴァンウィンクルの花嫁』や『日本で一番悪い奴ら』などでの目覚ましい活躍ぶりは素晴らしいものでした。

ちゃんと役について考える力を持っていれば作品とともに1歩でも2歩でも成長していけるんだということを証明してくれて嬉しい気持ちになりました。

また他の若手俳優たちもこうならばいいのに…。と残念な気持ちにもなりましたが。笑

その流れの中で本作は綾野剛の出来に左右され過ぎているように感じて、それが良いことなのか悪いことなのかと問答している次第でございます。

僕が本作を良い作品として受け入れられなかったということはそれが悪いことのように感じられるのですが、それだけ強大な力を綾野剛が帯びるようになってきているということは日本映画界にとってむしろ喜ばしいことなのではと思ってしまいます。

綾野剛以外の俳優陣

とまぁここまで綾野剛のことにばかり触れてきてしまいましたが綾野剛以外の俳優も悪くなかったです。

綾野剛演じる矢田部と対を成す羽田を演じる村上虹郎には今まであまりいい印象を抱いていなかったのですが本作では生意気さがとてもハマっていて良かったと思います。

『山田孝之のカンヌ映画祭』で実の父、村上淳が木になって歌わされている間に息子はこんな作品に携わっていたと思うとなんだか感慨深いです。笑

そして、出番は少ないですが前田敦子がとても良かったです。

本作では綾野剛演じる矢田部に良いように使われている女を演じているのですがその荒み具合といいますか、アイドル時代にはなかった色がとてもいい感じになってきているように思います。

熊切監督の大学の後輩でもある山下敦弘監督のみが今まで使いこなせてきた前田敦子という素材が少しずつ少しずつ広がってきていて嬉しいです。

それとこれまたちょい役ですが片岡礼子も母親役としてとても良かったです。

もっともっとあの親子の話が見たかったような気がします。

まとめ

本作は剣道を扱っているということで少々とっつきづらい感じがあるのは確かだと思います。

僕も「剣道?あぁ、なんか昔『武士道シックスティーン』とかい駄作がありましたね。」というぐらいの感想しか持ち得ませんでした。

でもよくわからなかったとしても見た後になにか心に残るものがある作品だと思いますし、

8割方手持ちカメラで撮影されている映像が固定カメラに変わったときの画と最後の打ち合いのシーンが脳裏に焼き付いて離れないのは紛れもない事実なのです。

そして、僕が最もこの作品を好意的に感じる深い理由は、

『山田孝之のカンヌ映画祭』で山下敦弘が親殺しの作品を撮ろうとしていた時に、先輩である熊切和嘉はもうすでに撮っていたという偶然の符合がとても面白いと感じているからなのです。笑

その1点のためだけにでも本作を鑑賞しておく価値は十分にあると思います!

ぜひご覧ください!!(やや強引な締め。笑)

おすすめ度

☆7/10

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