この名前が消えることはない 『わたしはダニエルブレイク』感想/ネタバレ

あらすじ

イギリス北東部ニューカッスルで大工として働くダニエル・ブレイク。心臓に病を患ったダニエルは、医者から仕事を止められ、国からの援助を受けようとしたが、複雑な制度のため満足な援助を受けることができないでいた。シングルマザーのケイティと2人の子どもの家族を助けたことから、ケイティの家族と絆を深めていくダニエル。しかし、そんなダニエルとケイティたちは、厳しい現実によって追い詰められていく。

スタッフ

監督
ケン・ローチ
脚本
ポール・ラバーティ
撮影
ロビー・ライアン

キャスト

  • デイブ・ジョーンズ ダニエル・ブレイク
  • ヘイリー・スクワイアーズ ケイティ
  • ディラン・フィリップ・マキアナン ディラン
  • ブリアナ・シャン デイジー
  • ケマ・シカウズウェ チャイナ

作品データ

原題 I, Daniel Blake
製作年 2016年
製作国 イギリス・フランス・ベルギー合作
配給 ロングライド
上映時間 100分

第69回カンヌ国際映画祭パルムドール!

本作は2016年・第69回カンヌ国際映画祭で、「麦の穂をゆらす風」に続く2度目の最高賞パルムドールを受賞した作品です。

この年のカンヌはパルムドールの次点であるグランプリをドランの『たかが世界の終わり』が受賞していて個人的には???なのですが、

本作はそんな疑念を吹き飛ばすほどに納得させられる力強さを持った作品でした。

山田孝之に「あなたがあれほど欲しがっていたカンヌ映画祭パルムドールにふさわしいのはこういう作品なのだよ!」

と見せてあげたくなるぐらいに傑作でした。笑

イギリスの巨匠ケン・ローチ監督は以前にも『麦の穂をゆらす風』でパルムドールを受賞していますので今回で2度目の受賞となります。

ひたすら地味に描いていく

パルムドールを獲ったからといって本作には一切の派手さはなく、心臓病を患い仕事を辞めざるを得なくなった男ダニエルブレイクとロンドンを追い出され仕事も選べないまま2人の子どもを養いながら生きるケイティの交流とひたすら地味に描いていきます。

その地味さが僕たちが生きている世界と違う国での出来事とを同じ温度で伝えていくのに一役買っていると思いました。

彼らが抱く怒りや葛藤がまるで自分のことのように感じられ、

懸命に生きようとする主人公たちや、その周りの人たちを自然と応援してしまう、そんな映画です。

積み重なる怒り

日本にも様々な保障制度がありますが、実際利用したことがほとんどないので実態はよくわかりません。

でもこの映画で描かれているように日本においても複雑であることは間違いないでしょう。

今は色んなことが便利になってはいるものの、便利になることで恩恵を受けているのは実は利用する側ではなく、処理する側なのかもしれません。

本作に出てくるように役所の対応は嫌気がするほどシステマチックで、事あるごとにネットを使って登録させようとしてきます。

パソコンが身近になりつつある若い世代にとってはなんの苦労もなく便利に感じるものではありますが、(このブログもPCで書いていますし。苦笑)

ダニエルブレイクのような今まで触れてこなかった世代にとっては苦痛でしかないのだと、そんな当たり前のことに気づかずにきた自分を恥じました。

上の写真はマウスの使い方すらわからずに四苦八苦しているところです。

思わず笑ってしまうようなシーンでもあるのですが、実際に起こり得ている現実としてハッとさせられるシーンでもありました。

そして頑張ってすべて打ち込んでみてもなんらかの原因でエラーが出たりして打ちひしがれてしまうのです。

このようなことが積み重なりダニエルブレイクが抱えていくイライラはもしかしたら自分のふがいなさに対するイライラでもあるのかもしれません。

それは決して他人事ではなく自分の父親世代の姿でもあると考えると胸が締め付けられるとともに、「今度困ってたら助けてあげよう!」と素直に思えたのでした。

(よっ、親孝行映画!笑)

そんなダニエルブレイクも決して打ちひしがれ続けているわけではなくて、この写真もように隣人のチャイナくんが中国の知人とテレビ電話をしている横で楽しそうに笑いあったり、

ケイティの子どもたちと楽しそうに遊んだりしています。

そんなシーンを鑑賞後に思い返すとそれだけで涙が溢れそうになってしまいます…。

報われないのが人生か…

本作はひたすら報われないまま進行していきます。

まるでそれが人生だと僕たちに見せつけるように。

でもその中でも人と助け合いながら生きることは絶対に無駄に終わることはない。

ずっと残り続けていくんだという温かなメッセージを僕らに与えてくれました。

悪いのは君じゃない。

だって懸命に生きてるじゃないかと。

ダニエルブレイクは言い続けてくれます。

こういう作品があって、それが人々に届き続ければきっと社会は変わってくれる。

そんな大きな希望を持ってこの映画は生まれたはずで、

その映画にカンヌの最高賞であるパルムドールが与えられたということは改めて素晴らしいことだと声を大にして言いたいです。

ぜひ多くの人に見ていただきたい作品です。

そしてダニエルブレイクという人がいたという証を胸に刻み付けてください。

おすすめ度

☆8.5/10

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク